rakitarouのきままな日常

人間の虐待で隻眼になったrakitarouの名を借りて人間界のもやもやを語ります

忘れられたウクライナ戦争と西洋の敗北

2025年6月16日、17日のカナダにおけるG7会合は、トランプ大統領がイランとの戦争に向けたNSC会議で不在となる中、呼ばれていないのに物乞いに来たゼレンスキー氏トランプ大統領に相手にされず、残ったG6の首脳達から「まあ頑張ってくれ。」という励ましを受けて退散する結果になりました。

ざらしで適当に行われたG6とゼレンスキーとの会議(まあ頑張ってね、で終わり)

 

〇 米軍を犠牲にしてまでイランの核保有を阻止しない

トランプ大統領は強行な姿勢でイランに核保有を諦め、イスラエルに対して「無条件降伏」するよう呼びかけています。これはトランプ流ディールの最高条件なので、ここから値引きが始まると言って良いでしょう。トランプ氏は17日にロシアのプーチン大統領とも電話会談をしたことを米ロ共に明らかにしており、そこでロシアの仲介申し出を断ったと18日に述べました。

18日からは、イランへの開戦機運は一歩引いた言論になり、プーチン大統領と中東問題について何等かの合意に達した事が伺われます。イランとロシアは2025年1月に戦略的パートナーシップ協定を結んでおりウクライナ戦争ではイラン製の無人機やミサイルなどをロシアが使用していることからも、準軍事同盟的な意味合いがあると考えられます。イランの核保有阻止が米国の存立に係わる絶対的国益でも核心的利益でもない以上、国内イスラエルシンパを黙らせる以上のリップサービスはしない様にも思います。

 

〇 イランはイスラエルには徹底抗戦を表明

ハメネイ師は強烈な反撃を示唆し、今まで使われなかった反撃不能と思われる新型ミサイルをイスラエルに発射した

イスラエル上空で踊る様な航跡を描く遠距離弾道ミサイル「セジル」を始めて使用した(最も右側の物)

一方でプーチンからテロリストと断定されたゼレンスキーとはまともに合わないという姿勢はこれからも変わらないでしょう。欧州の首脳達は完全に置いて行かれた体を今回見せています。

 

〇 エマニュエル・トッド「西洋の敗北」の意味するところ

歴史家で人類学者のエマニュエル・トッド氏が2024年に著した「西洋の敗北」は2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻と2023年秋までの展開を受けて、冷戦後グローバル一極態勢とEUの限界を「西洋の敗北」という衝撃的な表現で表した400ページ以上の大著で、米英、欧州の各国の歴史や民族性、社会性を含めた解説です。大きくはこの1000年の歴史を作って来た「西洋」なるものが終焉を迎えつつあり、歴史を作る側から歴史の一部になる側に至る経緯が解説されています。英米については、冷戦終結までの勝者として常に歴史を作る側であった驕りが「ウクライナ敗戦」にどう影響したか。EU諸国については、EU成立による国民国家としての国益意識の喪失(2007年EU憲法の否決によって代わりにリスボン条約で国家よりもEUが優先される基盤ができた)と、米ドルに対抗できる経済主体としてのEUの利益追求がいつの間にかNATOの利益追求にすり替えられて、EU(特に独仏)にとって自殺行為となる政策をウクライナ戦争で進め(ロシアエネルギー制裁やノルドストリーム爆破)てその衰退を速めている様が解説されています。

日本は西洋の一画でありながら、それは敗戦による強制的疑似西洋化であって、本来のアジアにおける中国に対する先進国としての立ち位置は他の西側諸国とは異なる描かれ方をしています。

今回のG7では石破総理は中東情勢について「イスラエル、イラン双方に自制を」と促した事は日本の立場として大変良い事でしたが、愚かなご機嫌取り官僚が他のG6声明にすり寄った内容に訂正させた様で、ヘタレはどこまでもヘタレだと思わせます。